株式市場の相場サイクル
今どの相場に位置しているのかをきちんと把握することで、投資戦略を見直すことができます。
金融相場
景気悪化から金融緩和が実施されることで起きる上昇相場。将来の企業業績の回復を見込んだ期待感から株価が上昇します。成長ポテンシャルが高いIT企業などのハイパーグロース株が買われる傾向にあり、直近では、2020年コロナショックから始まったFRBの量的緩和が良い例です。
基本的に、銀行は金利を下げて経済の活性化を図ります。特に重要なことは、金融相場は将来の期待感により株が買われるため、実際にはまだ業績が上がっているわけではありません。決算などでコケてしまうと株価は大きく下がることもあります。
上がりやすいセクター
- 情報技術セクター
【テクノロジー・ソフトフェア・ハードウェア・半導体関連】 - 不動産セクター
【住宅・マンション・商業施設・公共施設】 - 金融セクター
【銀行・保険・消費者金融】
業績相場
多くの経済指標が好転し始め、消費が活発化し、GDP(国民総生産)も回復に向かっていきます。直近では、コロナワクチンが完成し、いよいよ経済が再開される!と活気付いた2021年以降が良い例です。
企業業績の改善が株価上昇を加速させる業績相場では、金利は緩和されていた状態から少しずつ引き締められ始めます。しかし、それまでの金利低下の影響もあり、企業の業績は上昇しているため、株価もある程度長期間にわたって上昇が維持されます。
成長性を見込んだ期待感から買われた金融相場に対し、モノやサービスの需要が業績に影響する業種が値上がりしやすく、前半では『セメント・ガラス・鉄鋼』などの素材系、後半では『機械・自動車・半導体』などの加工業が主役となります。
ただし、不景気時には一転して業績の悪化が見込まれるため、株価の伸びしろはグロース株ほど大きくないことが多いです。
上がりやすいセクター
- 資本財セクター
【建設・土木・電気部品・産業設備・航空宇宙】 - 素材セクター
【化学・鉄鋼・繊維】 - 一般消費財セクター
【自動車・家庭用品・レジャー用品・アパレル・ホテル・レストラン・小売業】
これらのセクターを『景気敏感株』と表現することもあります。
金融相場から業績相場への移行を示す指標の1つにPER(株価収益率)の低下があります。 PERは、株価を一株当たりの純利益で割ったものです。つまり、純利益(分母)が大きくなれば、PERは下がります。
逆⾦融相場
インフレがゆっくりと進んでいれば、堅調に景気が拡大している証拠でもあるので、問題はありません。しかし、景気が良くなりすぎて急ピッチでインフレが進むようなバブル経済は、その分、不況時の反動が大きくなるので好ましくないでしょう。
これをコントロールする中央銀行は、景気が過熱しないよう金融引き締めを実施し、過度なインフレの沈静化を図ります。金融引き締めによって景気拡大ペースが鈍るなど、景気後退の兆候を理由に株式相場が反転するステージが『逆金融相場』です。
上がりやすいセクター
- エネルギーセクター
【石油・ガス・石炭・太陽光・風力・水力】 - ヘルスケアセクター
【製薬・バイオ・医療用品・医療販売・医療保険・医療施設】 - 生活必需品セクター
【流通・小売・飲料・生活用品・食品・タバコ・パーソナルケア】 - 公共事業セクター
【電気・ガス・水道・インフラ】
『弱気相場 → 金融相場 → 業績相場』と株価と業績が上がっていくのは一連の流れですが、過去の事例を見ても、強気相場から弱気相場に移行するパターンは多岐にわたります。
株価は景気に先行して動くので、先々の景気後退と企業の業績悪化が織り込まれる逆金融相場では、株価が下がりやすく、中でも、景気敏感株は全面安となり、 『電力・ガス・食品・日用品』といった生活に欠かせないモノ・サービスを手掛ける企業は、景気後退期でも需要が大きく落ち込むリスクは低いと考えられるため、投資資金が向かいやすくなります。
このタイミングでは、新規の株式投資は控え、もし株式を手元に残すのであれば、優良株のみに限定し、ポジションを減らすことをおすすめします。
・逆業績相場
金融引き締めの影響で企業の業績も下がり始め、後退期が続くと、やがて不況期に突入します。売り上げが大きく落ち込めば、ボーナスのカットなどを通じて消費も落ち込むかもしれません。消費が落ち込めば、さらに企業の売り上げが減少します。この悪循環によって株価の下落が続くのが『逆業績相場』です。
こうした状況で相対的に株価の下落幅が小さいとされるのが、ヘルスケアセクターなどです。ただし、一般的に電力・ガス、日用品、食品、医薬品などは景気動向に左右されにくい『ディフェンシブ株」に位置付けられ、景気が悪化してくるとこういった業種の株価が相対的に上がりやすいイメージを持っておくと良いでしょう。
株価は一度大きく下落しますが、景気が低迷している時、次の景気対策が実行され、最初の金融サイクルである『金融相場』へ徐々に移ることが予想されます。この段階で通常割高で購入するのが難しい優良株へ投資する機会が訪れるため、余力をしっかり残した投資家は得をする可能性が高くなります。
上がりやすいセクター
- 通信事業セクター
【電気通信サービス、無線通信サービス、メディア、娯楽、メディア・広告】 - ヘルスケアセクター
【製薬・バイオ・医療用品・医療販売・医療保険・医療施設】 - 生活必需品セクター
【流通・小売・飲料・生活用品・食品・タバコ・パーソナルケア】 - 公共事業セクター
【電気・ガス・水道・インフラ】