米10年国債の利回り上昇で株価が下落する理由とは

金利の種類

金融市場において金利は景気に対して非常に敏感です。金利は景気を先行しており、株だけでなく、為替・オプションプレミアムなどあらゆる金融商品の現在価値を考える上で必ず覚える必要があります。

米国の政策金利

金利が他の投資商品と異なる点は、中央銀行FRB)が一方的に政策金利を決めることができる点にあります。

  • FF金利 → 民間銀行が資金をやり取りする際に使う短期金利(政策金利

FRBは、政策金利であるFF金利フェラデル・ファンド金利)の誘導目標をFOMC連邦公開市場委員会)で決定しています。

FOMCでは3・6・9・12月に経済や政策金利の長期見通しが発表され、その中でも『Longer run』とされる部分はFOMCが考える長期的な経済と政策金利のあるべき姿を示しています。上の表の場合、Longer runは『2 .5%』で、投資家にとってひとつの目安となる数字です。

 

国債金利

国債金利の種類

短期〜長期金利と呼ばれる金利は主に債権市場で売買される国債利回りのことを指します。

  • 1年以下   短期国債
  • 5年以下     中期国債
  • 10年以下 長期国債
  • 10年以上 超長期国債

期間は償還までの年数で分けられ、償還期間中は利子を受け取ることができ、満期を終えると元本が全て償還されることが最大の特徴です。

特に株や為替に大きな影響を与えるのは『短期金利』と『長期金利』で、どの期間の金利がどのような思惑で上下するのかを考えることによって、市場の大まかな流れが把握できるようになります。

国債利回り(金利)について

表面利率

国が投資家に支払うことを約束した年間の利子率(金利)のことで、固定金利型の国債では、発行時に決められた表面利率は満期償還まで変わりませんが、新規に発行される国債の表面利率は、金融市場で決まる標準的な金利市中金利)の動向などを勘案して決められるため、同じ満期までの期間の国債でも発行時期によって表面利率は変動します

国債利回り

表面利率による金利収入市場取引による売買差益も加えたトータル年間収益率を表します。株式と同様に一度購入したものを市場で売却したり、すでに市場で流通しているもの(既発債)を購入することも可能で、その価格は常に変動し、安く買って高く売れば、株式のように売買差益を得ることもできます。

短期金利(短期国債利回り)

期間が1年未満の短期金利は、マーケットが1年以内に『利上げ(または利下げ)』がないと考えられていた場合、概ね政策金利(FF金利)と一致します。もし短期金利が上昇(下落)していたら、マーケットは非常に近い将来の『利上げ(利下げ)』を織り込んでいるということになります。

中期金利(中期国債利回り)

期間が2〜3年くらいまでの中期国債の金利は、短期金利が極めて近い将来を織り込んでいるのに対し、今後数年単位の織り込みを示しています。つまり、中期国債の利回りを理解することで、マーケットがどの程度・いつ頃、利上げ(利下げ)を織り込んでいるのか推測できます

これを分析するためには、バイナリーツリーを使った確率分析を行いますが、大事なことは中期金利が動き出すとマーケットは『利上げ・利下げ』を織り込み始めてるかもしれないと察知することです。

長期金利(長期国債利回り)

投資家において10年国債利回りは、最も重要な金融指標と言われるほど基本中の基本になります。

景気が悪くなり長期国債金利が下がる

  • 国債の価格が上昇
  • ゴールド価格が上昇しやすい
  • 円高になりやすい
  • ハイテク・グロース株が上昇
  • 株価が上がりやすい

景気が良くなり長期国債金利が上がる

  • 国債の価格が下落
  • ゴールド価格が下落しやすい
  • 円安になりやすい
  • ハイテク・グロース株が下落
  • 株価が下がりやすい

 

10年物国債利回りはリスク・フリー・レート(リスクがほとんどない)として扱われるため、金融商品としては一番安全なものであり、この国債利回りが上昇・下落することによって他のリスクの高い金融商品の価格に反映されることは容易に想像できるでしょう。

長期金利を決める要因は様々ありますが、例を挙げるなら、

  • FEDのQE縮小タイミング
  • 国債の発行予定額(規模感)
  • FOMCの政策金利
  • 経済の長期見通し
  • 物価上昇率

FED(Federal Reserve System)

中央銀行の制度 その制度を仕切るのがFRB (Federal Reserve Board )

QE(Quantitative Easing)

量的金融緩和政策=中央銀行が国債を大量に買いお金を流通させ経済を促そうとする市場操作

S&P500指数と米10年国債利回りの推移

投資家の行動から、超低金利の場合、債券投資からのインカムゲインよりも、株式投資からのキャピタルゲインの方が好まれる傾向にありますが、『米10年国債利回り』が上昇するにつれて、債券投資からのインカムゲイン増加に期待でき、株式は売られる傾向にあるというのが一般的な流れです。

 

金利は炭鉱のカナリア

金利は『炭鉱のカナリア』という格言がありますが、正確には相場の危険をいち早く知らせてくれるシグナルのことを指します。

金利はその役割を担ってくれますが、金利よりも早く知らせてくれるシグナルが『HYG』のようなハイイールド社債、通称『ジャンク債』です。

ジャンク債とは

利回りが高い債権のことを指し、信用格付けがB級以下の社債を集めたインデックス指数に連動するETFです。米国の最も負債を抱えた低格付けの企業、財務的に苦しく、債務不履行や利払い不能のリスクが高い企業が発行する債券なので、非常にリスキーな商品になります。

基本的にマーケットは『ダメな株ほど最後に上がり、ダメな株から下がる』という法則性があり、最初は割安の優良株が真っ先に買われますが、割高になってくると、投資家は期待する利回りが得られません。

利回りを求める投資家は、より高い利回りを求めて最終的に優良とは言えないダメな株を買い始め、ダメな株まで上がり始めると相場はいよいよピークを迎えると想像できるでしょう。

反対に景気が不安定になると、投資家は真っ先にダメな株から売り始めるのが原則です。ジャンク債もこれと同じで、景気が良い時は買われ、景気が悪くなりはじめると、いち早く下がります

よって、HYGのようなハイイールド債ETFが大きく下がり始めると、マーケットの地合いが悪くなると予想できるのです

 

  • ジャンク債価格が大きく下落(利回り上昇)→ 警戒が必要

デフォルト率とは

デフォルト率とは、1年間に貸出先からの返済が滞る、すなわち債務不履行(デフォルト)状態に陥った企業の、米国ハイ・イールド債権市場に占める割合をあらわします。